この段階でもう一度デザイン行動とは、を考えてみましょう。

デザイン活動とは、物や環境を形作ったり表面的に整えたりばかりするものではありません。

多種多用な人間が、満足出来る有益な結果を導き出す素材の準備を行う事なのです。

その下準備として欠かせない検討事項が、対象物の本質を探り出す事と、

周りを取り巻く対象物や対象要素感のバランスを適切に調整する事なのです。

一つの実例を挙げてみましょう。

下の写真は私がプロダクトデザインに初めて接したころ、今から半世紀以上前に

手掛けた結果例です。

この例が デザインの最適な結果を示すために登場させてのではありません。

当時未熟な私の作業結果と捕らえてください。

さてどの部分に注目したらよいのでしょうか。

業務のプロたちが集うNHKスタジオの環境の中で命題の

最も優先されるべき事は、絶対に間違えの無い完璧とも言える結果を生み出さねばならないという事でした。

それを実現させる為に行った作業がこの音声卓を使用する人員と作業卓との

人間工学的な検証を徹底的に行う事でした。

視線の誘導、腕を振り回して操作する音声調整の動作と

向き合う事、腕の長さ 人体の各関節の有効範囲 そしてその中で

最も楽な動作範囲を見出す事、そして何よりも大切で難しかった事とが

作業者を特定せず体の大きい活発な人から背丈の低い動作が控えめな作業者に至る

広範囲な汎用性が求められたのでした。

その値を見つけ出す手法として人間工学上の偏差値データが使われました。

多種多様の人体のどの範囲に実用的な山があるのか、使用可能な操作範囲は何処までかを

探る作業の繰り返しでした。

当時新米の私にはそのような技量が備わっているはずもなく、

現在の千葉大学工学部出身の先輩から手取り足取りたたきこまれました。

実物大のモックアップを作り自分の体や当時数人居た同僚の

実体験も繰り返されました。つまり膨大な予想される要素のデータの

整理と実用範囲を見出すことに多くの時間が通やされました。

当時の放送現場では、長年の経験から生み出した基本仕様寸法と

その道具を実現させるための標準機器製造方法のスタンダードとも言える

手法が保管されてあり、具体的には自由な形状の製造が可能な鉄板板金溶接加工と

焼き付け塗装による外観仕上げの ほとんどが職人技に頼る手仕事で成り立っていました。

その現実に新風を吹き込む要素がないかと考え抜いた挙句の発案が

製造の標準化が可能な決まった最小限の断面形状を有する

アルミ押し出し材(アルミサッシュ)とすでに標準化されている

ラック取り付け金具、サッシュの接合に必要な追加金具を提案して

スタンダード化の実現を提案しました。

そして社内や発注元の承認が取れて実現できたのが本案です。

3種類の断面形状のアルミサッシュと それを組上げる最小限の接合金具、

その外観をつなぎ合わせるには 単なる打ち抜き板金加工のみで

後の塗装仕上げもいらないボンデ鋼板の使用が実現させました。

徹底した人間工学のスタディーと相まって

完成品の評価は上々で、私がそのプロジェクトに

深くかかわれたことは、今の自分の仕事の原点と なっています。

物のプロダクトデザインを実現する時、

こんな経過があったという事のご紹介のつもりで説明させていただきました。

ここで伝えたい要素は、物体の目に見える部分は氷山の一角でしかない事を

理解してほしいと思っています。

そして各必要要素間のバランスをどのように組み立てたかも感じ取っていただけたらと思います。

次の画像は3Dによるプロダクトデザインスタディーの過程を示しています。

この段階では単に絵に描いた餅と同じですが、

完成イメージがより具体的に予想する事ができるようになります。

グローバルバランスを成し遂げる上で作業途中とは言え

強く配慮しながら進めなければなりません。

具体的な手法や注意点はあるのでしょうか?

難しい質問ですが、私が日頃から心がけている事をいくつか

お伝えすることはできます。

まず第一にその物体の存在目的に反する要素の探り出しを行います。

物は製作過程で色々な意見が存在し、又実現に深くかかわていますから

不具合と感じても簡単に無視する事はできません。

何が不具合でどの要素を必死に守り抜くか、

それらを取捨選択を迫ら得るのが担当デザイナーの役目です。

そこには豊富な経験と、築き上げた信念ともいうべき方向性を

しっかりと持っていなければなりません。

これを実現させるのが デザイナーが必要な理由であり

使命なのです。

長年の経験がものをいう部分でもありますが、基本的には

その人間性、生き方に対するしっかりとした意思を

持っていなければ実現する事は叶いませんん。

グローバルバランスを目指す為に最も重要視される要素が

積み上げた経験から得た知識ではないかと考えています。

又その事にしっかりと目を向ける意思でありとも思っています。

この辺でもう一度グローバルバランスの必要性に付いて

思い出してみたいと思います。

言葉の通り地球規模のバランスを整える事ですが

あまりに対象範囲が広く 対応に苦慮してしまうのではないでしょうか。

せめて日常の自分の身の回りの要素に目を向ける事を忘れなければ

やがてはグローバル規模のバランスが実現できると固く信じています。

食事に使う箸の左右の長さのバランスを考えるところから始めてください。

当然その長さがちぐはぐであったら用途の達成は

望めません。まずは身近なことにも注目する事は忘れてはならないのです。

結構問題の解決が難しいケースは

豪華さ、他との競争心から生まれる優越感を追い求めようとする時です。

人の考えはそれぞれであり、その競争心が

弱肉強食 生物の存在を確立しているからです。

つまり否定してはいけない要素なのですが

私は次のように考えています。

その問題よりももっと大切で根源的な必要要素があるのではないかと

探るようにしています。

もう一例で考えてみましょう。

私はオーディオメーカーに長く席を置いていたので

プレーイヤーのアームも多く手掛けてきました。

昨今アナログオーディオが復活してきつつあるので

プレイヤーのアームに付いての必要性能は

よく理解しておられることかと思います。

機器の中でもスタイルより、目的にかなう性能が優先する

好例かと考えて話題としました。

アームの並行回転中心の動きを考える時

ターンテーブルに乗せたレコード盤の溝に

可能な限り直角に接することが求められ

上下に動く動作は先端に付けられた

カートリッジの針先が盤に刻まれた音響を記録した溝に

正確に追従し必要以上の重量をかけてはなりません。

このような複雑な条件をクリアするフォルムは

予想以上に難しく範囲の狭い物ですが

その中にすら使う人の心を満足させようとする努力がちりばめられています。

この章ではプロダクトデザインを中心に考えてきましたが

次回はグラフィックデザインに的を絞って考察してみたいと思います